新型インフル対策の検疫、休校で議論―厚労省総括会議(医療介護CBニュース)

 厚生労働省の「新型インフルエンザ対策総括会議」(座長=金澤一郎・日本学術会議会長)は4月28日の会合で、新型インフルエンザ対策として実施した、機内検疫などの「水際対策」や、休校などの「公衆衛生対策」の効果について議論した。「特別ゲスト」として招かれた検疫所や自治体の関係者からは、検疫を縮小して国内対策に移行するのが遅れたとの指摘が相次いだ。一方、休校については「感染拡大を遅らせた」と評価する意見が多かった。

■検疫実施は「最悪のシナリオ考えた」―上田健康局長
 機内検疫は、WHO(世界保健機関)が警戒態勢を「フェーズ4」に引き上げたことを受けて、できる限りウイルスの国内侵入の時期を遅らせることを目的に昨年4月28日から実施された。5月16日に神戸市で国内初の感染が確認されたことを受けて、22日に取りやめた。

 全国検疫所長協議会の内田幸憲会長(神戸検疫所長)は、欧米での感染拡大のスピードを考えると、WHOのフェーズ4宣言後では検疫開始が遅かったと指摘。また、検疫の縮小が「あまりにも遅かった」との見方を示した。前成田空港検疫所検疫課長の小野日出麿氏(仙台検疫所検疫衛生課課長)は、濃厚接触者らを空港近くのホテルに7日間とどめる「停留」により、迷惑をかけたくないという思いから、症状を正確に自己申告しなかった人が、入国後に医療機関を受診することがあったと振り返った。成田空港に検疫の応援に出向いた済生会神奈川県病院の小西靖彦院長補佐は、必要以上の応援は現場の混乱、派遣元の病院の負担をもたらすとし、必要な応援人数を事前に考えるよう求めた。
 川名明彦氏(防衛医科大学校教授)は、インフルエンザの場合は感染しても症状が出ない「不顕性感染」があることを考えると、検疫の効果が出にくいと指摘。しかし症状が分からない新興感染症の場合は、発生初期の検疫実施は「どうしても考慮する必要がある」との認識を示した。
 厚労省の上田博三健康局長は、ワクチンを確保できる見通しがなかった状況下で、新型インフルエンザウイルスがタミフル耐性を持つことが懸念されたと説明。「最悪のシナリオを考え、感染力が判明するまでは、(流行の)ピークを遅らせるために検疫をやるしかなかった」と述べた。

■休校、流行抑えたが社会的影響も
 休校や学級閉鎖の効果について、東北大大学院医学系研究科微生物分野の押谷仁教授は、学校での流行は抑えられなかったが、季節性インフルエンザで見られる学校から地域への流行拡大を最小限に抑えたと評価。兵庫県教育委員会事務局の濱田浩嗣・体育保健課長も、県内全域で行った小中高校の休校以降、患者数が急激に減少したとして、「感染拡大に一定の効果があったと考えられる」と述べた。

 しかし濱田課長は、長期間の休校は学習指導面などから限界があり、「現場では1週間が限度との声が強かった」と指摘。全国衛生部長会の笹井康典会長(大阪府健康医療部長)も、風評被害や保育所の休園による保護者への影響など、社会経済活動への影響が大きいとの見方を示した。

■例年と比較できないサーベイが問題
 同日の会議ではこのほか、患者の発生動向を把握する「サーベイランス」についても議論した。
 サーベイランスについては、以前からあった国立感染症研究所感染症情報センターによる定点医療機関からの患者報告、厚労省による休校数の把握に加え、新型インフルエンザの発生状況に応じて、集団発生を把握する「クラスターサーベイランス」や、入院患者数などを把握する「入院サーベイランス」などを始めた。

 感染研の谷口清洲・感染症情報センター第一室長は、新たに始めたサーベイランスは、季節性のデータがないため例年と比較できないことを問題視。神戸大大学院医学研究科の岩田健太郎教授は、サーベイランスの実施主体を厚労省か感染研に一元化するよう提案した。

 感染研については前回の会議から、情報提供体制の強化を求める声が相次いでいる。
 これについて感染研の岡部信彦・感染症情報センター長は、同センターの研究者が厚労省に常駐する体制をつくるよう、厚労省から提案されたと説明。「いいアイデアだと思う」と述べた。
 ただ、人選によっては同センターが機能しなくなると指摘。電話会議やテレビ会議のアイデアもあるが、予算獲得が難しいとして、今後の改善点に挙げた。


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